先日、みずほ総合研究所で「海外子会社の内部統制と管理体制づくり」というテーマでセミナーを開催させて頂きました。内部統制のプロである(株)ビズサプリのCEOの三木孝則さんが主に制度や仕組を説明され、私は自分自身が海外拠点にいたときの実務経験を踏まえて、より現場に近い話をさせて頂きました。お陰様で60名以上の方にご参加頂き、大変ありがたいと思っています。
東芝の例を持ち出すまでもなく、海外子会社のリスクの顕在化により、本体の屋台骨が揺らぐような事例が、最近多くなっています。もちろん、規模が大きい子会社に何かが起こると、親会社やグループ全体に大きな影響を及ぼすということはありますが、事態をより深刻にしているのは、こういったことが突然明らかになるということです。このため、様々な時間的制約の中で取りうる選択肢がどんどんなくなっていき、結果的に最悪に近いシナリオしか残らなくなってしまうということが起こります。
そういう意味で、海外子会社の実態をできるだけリアルタイムで把握しておき、突然爆発が起こるということがないようにしておくことが非常に重要です。そのための仕組作りや統制・管理はもちろん大切ですが、それ以上に大切なのは、本社と海外子会社との間で、双方向のコミュニケーションができていることが一番重要です。
海外子会社から本社への報告や申請ということだけではなく、「双方向の」ということがポイントです。
内部統制をグローバルに展開する際に、本部から海外拠点に対して一方的に作業指示をしたり、報告を求めたりはしていないでしょうか。「何のためにこれをやるのか」「最終成果物は何なのか」を明確にしてゴールを共有し、結果についてもグローバルに共有することをしないと、海外拠点側はインセンティブと当事者意識を持つことはできません。その結果、だんだんとやらされ感満載となり、「O.K.Y.」(お前来てやってみろ)と、本部に対して不信と不満を持つことになります。こうなると情報は本部に入ってきません。
私は、米州の地域統括本部にいたことがありますが、ある時は海外の現場の立場として、日本の本部に対して「O.K.Y.」と言ったり、ある時は本部の立場として、拠点側から「O.K.Y.」と言われる対象になったりしていました。ほぼ毎日この確執の中にいたと言ってもいいと思います。
本部と現場の意識のずれは何も海外に限ったことではありませんが、距離や時差、言葉や文化の違いが大きい海外との関係では、特に顕在化しやすく、またその弊害も大きくなりがちです。組織は、所詮人間同士のコミュニケーションから成り立っています。グローバルに組織運営をするには、何よりも双方向のコミュニケーションが大切だと思います。