日本の出入国の制限もようやく少しずつ緩和されてきました。

コロナ禍が始まった2020年の年初から、アウトバウンド・インバウンドともビジネスのための海外渡航が実質的にほとんどできない状態となり、また商談や展示会等の対面でのイベントもほぼ実施不可能となりました。私自身も、2020年の2月にドイツの展示会に行ったのを最後に、その後海外出張は全くできませんでした。

海外販路開拓の重要な手段のひとつであった展示会も、全世界ベースで相次いで中止や延期を強いられたため、新たに海外事業展開を目指す日本企業の活動も大幅に修正を余儀なくされ、中には海外事業展開そのものを中断した企業も多くあります。

この間海外の展示会は、大規模会場での対面イベントからオンラインでのバーチャルなものを取り入れたものに代わり、何とかマッチングの機会を創出してきました。日本企業も、これに対応すべく、オンライン展示会への出展や、それに向けた海外向けホームページの刷新、SNSの活用、越境ECの開始等に取り組んできたところも多くあります。

オンライン展示会による発信・商談は、今までリーチできなかった潜在顧客にアプローチできる可能性もあり、販路開拓の新たな機会創出となっています。また、海外展示会に出展する側も参加するバイヤー側も、かける時間とコストを大幅に削減できるという意味で効率的な手段とも言えます。

一方で様々な制約もあります。特に、バイヤーが商品を実際に見たり手に取りながらその特徴や使い方を確認することが重要である商品については、売り手も買い手もオンラインでは隔靴掻痒の感があり、商談成立にまで至るのはかなりハードルが高いです。また、日本人の場合は総じてプレゼンテーションがあまり得意ではないことが多いため、オンラインでは効果的な訴求ができないということもあります。

コロナ禍もだいぶ落ち着いてきましたが、海外展示会は今後どうなっていくのでしょうか。

UFI(世界展示会業協会)という展示会関連業者のグルーバルな団体が、世界の展示会の動向について毎年2回サーベイを実施しています(「Global Exhibition Barometer」)。これをもとにいくつかのデータをまとめてみました

これは、展示会業界の活動状況について、今年6月に各国の業界関係者にヒアリングした結果をまとめたものです。それぞれの月において、展示会業界の業況が「ノーマルである」「活動が減少している」「活動を休止している」という回答を選択してもらい、このうち「ノーマルである」という回答の割合をまとめたものです。7月以降の数字は、6月時点での見通しです。

世界全体で見ると、今年の3月ぐらいから展示会業界の業況がノーマルであるという割合が上昇し、年後半には7-8割がノーマルという見通しになっています。特に、米国・欧州では回復度合いが大きいようです。一方、アジア・パシフィックでの展示会業界の業況回復は相対的に鈍く、特に中国・日本が遅れています。

欧米ではコロナ対策としての各種イベントの制約の緩和がいち早く開始された一方、中国や日本では慎重に対応しているということが影響しているようです。

では、対面での従来型展示会とオンラインでのバーチャル型展示会といった展示会の形態は今後どのようになっていくと見ているのでしょうか。1年前のサーベイとの比較もしてみました。

世界全体で見ると、対面型の展示会が回復すると見ているのは87%あり、前年の78%より増えている一方、対面型が減少すると見ているのは31%と前年の45%から減少しています。本サーベイは展示会業界関係者へのヒアリングがベースであるため、自らの業界の先行きについて希望的観測になっている面があるとは思いますが、多くの関係者が対面型の展示会の復活を見込んでおり、またその傾向はアフターコロナがより見えてきた今年に加速しているようです。尚、対面型とバーチャル型を組合わせたハイブリッド型が拡大するという見方が多いということには留意が必要かと思います。

一方、中国と日本については、対面型展示会が今後減少すると考える人の割合が多く、バーチャル型が対面型に取って代わると考える人の割合も相応にあります。このあたりは、コロナへの対応に関するマインドの違いが背景にあると思われます。

まだまだ予断は許されない状況ではあるものの、日本にいるだけでは実感がわかない海外の他の地域の見方は参考になると思います。特に、海外事業展開を目指す日本企業にとって、従来海外展示会の主戦場であった欧米の展示会の動向は注視が必要です。

私共のクライアント企業様の中でも、今年後半から欧米の複数の対面展示会への出展を開始したところもあります。また、日本国内の展示会への出展ではありますが、欧米・アジアから多くのバイヤーを日本に呼んで展示会での商談と工場見学ツアーを行うところもあります。

来年度の事業計画策定を進めている企業も多いと思いますが、その際に対面型の海外展示会への出展という選択肢も改めて検討していいタイミングに来ていると思います。