新しい年が始まりました。

米国の小売もホリデーシーズンのセールを終えましたが、全般的には前年対比5%程度の売上増となり、過去6年間で最も好調なホリデーシーズンだったと報道されています。特にオンラインでの売上が好調で、アマゾンは過去最高の注文数を記録したと発表しています。

一方で、2018年は米国の大手小売の経営破綻もありました。おもちゃのトイザラス、デパートのシアーズの破綻は記憶に新しいところです。また、昨年の米国の小売店舗の閉鎖数は約8,000店と、記録的に多いと言われた2017年とほぼ同じレベルとなりました。主要なところの閉鎖店舗数は以下のような状態です。

ウォルグリーン(ドラッグストア):600店舗
メーシーズ(デパート):10店舗(2017年は約70店舗)
ローズ(ホームセンター):51店舗
アバクロンビー&フィッチ(アパレル):60店舗
ギャップ(アパレル):200店舗
フットロッカー(靴):110店舗

オンライン販売の急速な拡大により、実店舗での販売が頭打ちになってきたことが、伝統的な小売業の不振や店舗閉鎖の要因であるとよく言われます。私も、56年前に米国で店舗の開設を行った際に店舗物件候補として狙っていたのは、家電・書籍・文房具・おもちゃ等の小売店で店舗を閉鎖するところの後のスペースでした。これらのセクターでは、多くの消費者が実店舗での購入からオンラインでの購入にシフトしていっていたのは確かです。特に家電では、実店舗で実際の商品を見てからネットで購入するという「ショールーミング」(実店舗が商品を見せるだけのショールームになるという意味)という消費者行動が顕著になっていました。アマゾンが実店舗の小売の競合相手を次々に打ち負かしていっている現象を「アマゾン・エフェクト」と言いますが、まさにその影響もあるように思えます。

 とは言え、本当にそのことだけが一部の米国の小売業の経営不振の原因でしょうか。

このグラフは、米国全体で消費者がどこで購入したかという実績と推計を表したものです。
2018年で見ると、

  ・オンラインでの購入:4,520億ドル(12.5%
  ・実店舗での購入:31,600億ドル(87.5%
     内 実店舗で見て実店舗で購入:17,100億ドル(47.5%
       ウェブで見て実店舗で購入:14,450億ドル(40.0%

となっています。確かにオンラインでの購入の割合は年々増加していますが、それでも全体で見ると1割ちょっとです。セクターによりばらつきはあるとは思いますが、全体では米国の小売の主戦場は引きつづき実店舗であると言えそうです。

実店舗で競争力を高めている企業もあります。

 家電量販店の最大手ベスト・バイは、ショールーミングの影響もあり、長らく業績低迷が続いていました。しかし、近年業績が急回復し、2018年度は総売上7.0%増、既存店売上5.6%増、営業利益率も4年連続で上昇しています。昨年秋に米国出張した際に私も久しぶりにベスト・バイの店舗に行きましたが、以前と見違えるような客数の多さにびっくりしました。価格競争力の弱いDVD等の売場を、サムソン・ベライゾン・マイクロソフト等のメーカーにテナントとして貸すことにより賃料収入を得るとともに店舗の集客力を高めたり、店舗をネット通販の配送拠点として活用したり、あるいは利益率の高い家電を強化して接客による販売により優良顧客を取り込んだり、というような戦略転換が奏功しています。いずれも、スペースの活用・接客・実体験の場といった実店舗の強みを生かすというところに特色があると思われます。

私は、米国の好況時も不況時も米国に滞在していたことがありますが、いずれのときも、ショッピングモールのテナント店舗が短いサイクルでどんどん入れ替わっていっていたというイメージがあります。それだけ米国の小売業は競争が激しく、変化のスピードも速いということだと思います。