新型コロナウィルスが猛威をふるい、全世界で経済活動が急速に縮小しています。
一刻も早く事態が収まるのを祈るばかりです。
このコロナ騒動がまだ中国に留まっているタイミングの1月にロサンゼルスに出張しました。その際、いろいろな小売店で市場調査を行いましたが、オーガニック系・ナチュラル系の商品が増えていっているのを実感しました。
オーガニック商品といえば、従来はWhole FoodsやTrader Joe’sといったオーガニック系食品専門のスーパーが主として取り扱っているというイメージでしたが、今では一般の食品スーパーの他WalmartやTargetのようなディスカウントストアにもオーガニック食品専門の棚があります。また食品だけではなく、ビューティー・ヘルスケア用品の売場にも「オーガニック」「ナチュラル」を謳った商品が数多く陳列されています。
米国農務省のデータによると、2018年までの10年間で米国のオーガニック商品の市場は2.3倍に膨らみ525億ドル(約5.8兆円)の規模になりました。このうち食品は479億ドル、その他ビューティー・ヘルスケア用品等の非食品は46億ドルです。2018年の前年比伸び率を見ると、食品は+5.9%、非食品は+10.6%です。一般の市場全体の前年比伸び率では、食品が+2.3%、非食品が+3.7%ですので、オーガニック系の商品の伸び方が非常に大きいことがわかります。
オーガニック商品拡大のトレンドは米国以外の国でも見られます。
これは2018年のオーガニック食品市場の上位5か国の規模を比べたものですが、欧州主要国や中国も前年比で拡大しているものの、やはり米国の市場規模が圧倒的に大きいのがわかります。
「オーガニック」と「ナチュラル」は自然派の商品として同じように聞こえますが、米国では明確に区別されています。連邦規制上、米国農務省が「オーガニック」の基準を設定し「USDA Organic」という認証を制度化し、この認証を得ない限り「オーガニック」を名乗れないことになっています。「ナチュラル」というのはこの認証基準を満たさない場合に使われますが、自然由来の成分以外のものが混在していることによる訴訟が起こったりもしています。
また小売店が独自に基準を設定している場合もあります。ナチュラル系のビューティー用品専門の代表的販売店であるThe Detox MarketやCredo Beautyでは、「ナチュラル」商品として自店で扱うためには一定の基準を満たす必要があるとして、使用してはいけない成分を公表しています(因みに、Credo Beautyではこの禁止成分のリストのことを「Dirty List」というやや刺激的な呼び方をしています)。
日本企業にとって、市場規模が大きくまた拡大を続けている米国で「オーガニック」「ナチュラル」商品の販路を開拓するチャンスはどの程度あるでしょうか。
日本食ブームということもあり、日本と「自然派」「ナチュラル」というイメージは米国の消費者にとって一般的には重なるものがあると思われます。また、オーガニック・ナチュラルな商品はその他の一般商品に比べて高価格です。商品によってその差は様々ですが、一般商品対比で3割以上は高めになり、場合によっては倍以上することもあります。そういう意味では、高価格帯で勝負をせざるを得ない日本企業にとっては、一般商品に比べて価格競争力上のハンデは相対的には少ないとも言えると思います。先日訪問したロサンゼルスのナチュラル系ビューティー用品専門店では、各商品が値札も付けずに陳列されていました。価格をあまり気にしない顧客がターゲットだからでしょう。
一方で、オーガニック・ナチュラルな商品については、一定の基準のクリアが前提となるため、そのためのコスト・手間がかかります。また競合商品もこの基準をクリアしたものであることから、その中で自社商品の独自性を如何に訴えていくかということが非常に重要になります。食品にしろビューティー・ヘルスケア用品にしろ、中身の違いがすぐにはわかりにくい商品をいかにアピールするか、すなわちブランディングがキーポイントです。
オーガニック・ナチュラル系商品のユーザーの中心は「ミレニアル世代」と呼ばれる1980年代から2000年代初頭に生まれた人達です。彼らは、多様性を重んじ、社会問題や環境に関心があり、インターネットやスマホ等を駆使するデジタル・ネイティブな人達と言われています。このユーザー層を相手にいかにブランディングしていくかが問われると思います。