今年もハロウィンが近づいてきました。

アメリカでは1億6000万人がこの10月末のお祭りに参加すると言われています。それに伴う消費は全米で88億ドル(約9500億円)にもなります。最近は日本でもハロウィンが定着し始めていますが、それでもその市場規模は1100億円程度ですので、やはり本場のアメリカの規模が圧倒的に大きいのが現状です。全米小売業協会が発表したアメリカの今年の1人当たりハロウィン関連支出は86.27ドルとほぼ前年並みのようです。

アメリカでは、11月のサンクスギビングから12月のクリスマスにかけてホリデーシーズンとなりますが、年間消費の約7割がこの年末商戦の時期に集中するとも言われており、今後の景気の動向を占うことになります。ハロウィンに関連する消費はその前哨戦とも言えるものです。

このグラフは、アメリカの1人当たりのハロウィン支出の推移とGDP成長率を並べたものです。2009年のリーマンショックの際に大きくハロウィン支出が減少しましたが、その後は概ね順調に増加してきており、経済成長率もこれとほぼパラレルに推移してきています。今年についても、ハロウィンの後の11月から12月の年末商戦は前年比4%程度の堅調な推移が予想されており、年度の経済成長率も2%台半ばになると見られています。一方で、足元では米中貿易摩擦の影響もあり、消費者信頼感指数が2ヶ月連続で低下する等、個人消費の先行きがやや不透明になってきているのも確かです。

ハロウィンは基本的には一日だけのイベントで、この時に購入する直接的な商品は、仮装用コスチュームや部屋・庭の飾り物、お菓子などと限定的なものです。但し、これらを購入するために店舗に行く機会が増え、その際にその他の商品も買ってしまうということから消費が拡大します。いわゆる「ついで買い」「衝動買い」というものです。

日本でも衝動買いする人は多いですが、私の感覚ではアメリカ人はより衝動買いをするように思えます。あるアメリカの調査によると、84%の人が衝動買いをすると言っています。そのうち8割は実店舗で衝動買いをしますが、スマホやタブレットで衝動買いするのは6%です。また年齢によってその傾向に違いもあり、25歳以下の若い人は95%が衝動買いをする一方、70歳以上の人のうち半分は衝動買いをしたことがないと答えています。

違う方法による調査ですが、日本で「よく衝動買いをする」と答えた人は26%というデータもあり、アメリカとの差はかなりありそうです。

そういった事情もあり、アメリカの店舗は、顧客の衝動買いを促すような仕組みを工夫しています。スーパーマーケットのカートは非常に大きく、つい色々なものを放り込みたくなります。関連商品を隣や向かい側に陳列しているのは、もちろん顧客の利便性を考えているからとも言えますが、ついで買いを促進していることも確かです。牛乳のような必需品を店の奥に陳列し、そこまで歩いて行く間にその他の商品に目がいくようにするということもあります。また、アパレルや生活用品の店舗のように飲食を取り扱っていない店でも、レジ前に飲料水やスナック菓子を並べてついで買いを誘っています。

私自身、アメリカの店舗に行くと、こういう戦略にまんまと引っかかって衝動買いをしてしまい後から後悔するということがよくありました。しかし、アメリカでは実に簡単に返品ができます。この返品システム自体が衝動買いを促進していると言えるかもしれません。

アメリカではオンラインでの買い物の割合が急激に増えていっていますが、実店舗にはオンラインとは違った機能や効果もあります。アメリカで市場調査をする際は、こういうことも参考になると思います。