先日、日経新聞に「日本のサービス 米より質高い」という記事がありました。日本生産性本部がサービス品質の日米比較を行った調査結果を受けたものです。米国滞在経験のある日本人500人と日本滞在経験のある米国人500人にサービス業の品質差を聞いた意識調査です。

日米のサービスの品質の違いに対して「どの程度価格を余分に払ってもいいか」と質問し、「多く払ってもいい」と答えた分だけ品質が優れているとし、品質差を貨幣価値に換算して数値化したものです。数値が高いほど日本の品質が高いことを示します。
調査対象の28のサービス分野のほとんどで、日本人も米国人も日本のサービスの品質の方が優れている(上記の表で100以上)と評価しています。

 また、日本生産性本部は同じ調査で、それぞれのサービス分野で日本と米国のどちらの価格が高いか聞いています。それによると、日本のサービス価格は、日本人が大学教育・クリーニング等9分野、米国人がホテル(中程度及び高級)・宅配便等15分野で米国より低いと認識しています。8年前に実施した調査では、日本人・米国人ともに対象18分野中17分野で日本のサービス価格が米国を上回っていましたが、今回は日本の価格の方が低くなっている分野が大幅に増えています。また、米国よりサービス品質が高くてもそれが価格に十分反映されていない状況が、今回の調査では28分野中25分野で見られたとしています。

 このことから、日本のサービス業は品質に見合った対価を得られず、それがサービス業の労働生産性の低下につながっているとしています。日本生産性本部の昨年12月の別のレポートでは、日本の労働生産性水準は、製造業で米国の7割、サービス業で5割であると試算しています。なかなか衝撃的な結果です。最近話題の働き方改革も、こういう状況を是正して日本の競争力を高めようという流れだと思います。

 これらの結果を見て、日本の企業が米国に進出していく場合どういうことが考えられるでしょうか。

 ひとつは、米国に比べて日本のサービスの品質が高く価格が低いのであれば、米国市場に打って出ても米国の競合相手に勝てる余地があるのではないかということです。日本と同じ品質のサービスを提供した場合、米国人はより高い価格を払ってもいいと考える可能性があるため、収益率も高くなりうると考えることができるかもしれません。 

一方で、日本に比べて米国のサービスの対価は高いという現実があります。日本企業が米国に進出する場合、米国内で様々なサービスを受けながらビジネスをする必要がありますが、そのコストは日本で考えている以上に高いものになります。日本では、接客の丁寧さや正確で信頼できるサービス提供を当たり前と考えるところがあり、これに対価を払うという感覚があまりありません。また情報についても対価を払って提供を受けるという意識が希薄です。このため、米国でビジネスをする際に当初想定している以上に思わぬコストがかかり、なかなか収益が出ないということがよくあります。

 この調査では、米国滞在経験のある日本人も、日本滞在経験のある米国人も、日本のサービスの品質が優れているという評価をしています。但し、日本の優位性の程度については、日本人と米国人で認識にかなり差があることに気が付きます。品質面で日本のサービスが1割以上米国より優れていると認識している分野(上記の表で110以上の数字になっている分野)は、日本人が28分野中21分野あるのに対して、米国人は地下鉄と大学教育の2分野だけです(大学教育の評価が高いのはやや不思議な気がしますが)。すなわち、日本人が思うほど米国人は大きな差を感じていないということです。

 日本から米国に進出しようとする際、「日本製だから」「日本発のものだから」米国では売れるはずだと考えることがよくあります。確かに日本の商品・サービスに対する一般的なイメージは良いですが、それだけで米国で売れるほど甘くはありません。当たり前のことではありますが、米国の消費者が求めているもの・重視するものを、先入観を持つことなく探ることが必要だと思います。その意味で、事前の市場調査を徹底的に行うことは非常に重要です。